先輩だけど「分からないなら口だすな!!」と言いたいときもある
わたし、眼科で検査の仕事をしています。
視能訓練士という国家資格持っているので。
昨日のこと。4歳の男の子がお父さんと一緒にやってきました。
お父さんが今日は検査を受けに来たので、ついでに息子の視力を知ってみたいと。
「ipadで動画ばっかり見てるんで、目が悪くなってないかなぁと思って。
わたしからは
「今までに視力検査したことは? 3歳児検診はどうでしたか?」
と聞いたところ、
「分かってないみたいだったからやってない」
で、お子さんは病院といういや~なことされるだろう環境で、全然しゃべってくれない。
お父さんの膝の上に乗って視力検査開始。
3歳児検診で使われている「ランドルト環」(Cの形したやつ)は確かに分からなそう。
まだ理解できない子向けのドッドカードという方法を選択。
このカードにはうさぎの顔が書かれていて、目のあるカードとないカードを見せて、「どっちにある?」と聞きながらだんだん目の小さいカードに変えていって、一番ちいさい目が分かったカードで視力を判定します。
眼科や眼鏡を作ったことがある人はやったことあると思いますが、
「中の絵を見ててくださいね~」
と言われてピッピと機械で測るものがあります。
あれは視力を測っているのではなく、遠視・近視・乱視がどのくらいあるか参考値を測っています。
そのお子さんは顔がちっちゃくてあご台に顔をのせられないかな~と思って、すぐに視力検査を始めました。
裸眼で両目で見て0.6。
レンズを入れれば視力があがるかもしれないので、機械で測ってみたいところですが。
この子うまくできるかな~。
できないかな~。
う~ん、と悩みつつ、候補レンズを入れていくと、
先輩登場!!
「なんで機械でやってからやんないの!!
やってからやるのが普通でしょ!!
そんなんじゃ正確にできないでしょ!!」
そりゃ、わたしだってしたいですよ。
だいたいでも分かりますからね。
でも!! ちっちゃい子だと大幅に違う数値がでることも珍しくないのです。
できれば小さい子向けの設備があればいいのですが、うちの病院にはない。
ちっちゃい子で視力がでないときにまず把握しておきたいのは
「強い遠視があるかどうか」
「左右差がないか」
「斜視があるか」
「その他の病気がないか」
というのが大事です。
右は近視のレンズを入れると視力が下がってしまったので、近視ではなかった。
遠視のレンズを入れると視力は下がらなかったので、程度は分からないものの、遠視がある。
左目もやりたかったのですが、お子さんが疲れてきたのでストップ。
きょうはここまで。
必要があれば先生からまた受診するか、少し休憩してから続きをするか指示がでます。
先輩が怒ってたのは
「機械を使わなかったこと」
で、仕方なくやろうとしたところ
泣き出しちゃった!!
機械で測るにはあごとおでこをピッタリつけていないとできません。
短い時間でもいいから乗せていられないとできないのです!!
眼科では
「泣かれたらおしまい。 いかに泣かせずにできるか」
というのが大事なのです。
1回目の受診で全部できなくてもいい。
1回目だけですべて正確にだすことは求めない。
今日はここまで。
また次がんばろうね、でもいいのです。
先輩の主張では、
「親子で来ているなら子どもからやるべき、お父さんの検査を見て不安になった」
→お父さんを見て、怖くないよというイメージを持ってもらうのも大事です。
「機械で測るとき、眼圧モード(風がでてくるやつ)になってから怖かった」
→まぁ、これは絵が見えないので、原因の一つにはなったかもしれません。
でも、スイッチ押す前に気づいて切り替えます。
実際、スイッチはまだ押してない。
台に乗せるだけで泣き出してしまったので。
「泣き出しても続行」
→いやいや、無理は禁物です。
先輩とどうしてこんなことになかったかというと、
「専門的な知識の差」
だと思います。
先輩は特に何か資格を持っていません。
眼科で働き始めてから勉強してきた、というわけです。
視能訓練士は学校でみっちり勉強して、国家試験を合格しないとなれません。
もちろん、それだけでは不十分です。
現場でしっかり経験して、やっと一人前になれるのです。
ただ、無資格でもがんばって勉強して、たくさん経験して、
努力してきたわけですから、すごいと思います。
わたしは新人ですし、資格を持っているからといって偉そうには絶対しません。
学ばせていただくという姿勢を大事にしています。
で、検査を終わってから
診療報酬の点数はどうなるのか、ドッドカードは近くの視力になるのか、
と聞いたところ
「ドッドカードはわたしたちは使わないから知らない」
視力は遠くの視力か近くの視力を測ったかで点数が変わるのです・・・。
先輩視能訓練士が戻ってきたところで質問。
「どっちで点数とるんですか?」
「ドッドカードだったら近くでいいよ。機械では測れた?」
「いや、泣き出しちゃって」
「じゃぁ、近見(近くの視力)だけでいいよ」
診察室にはなかなか入らなかった。
すでに警戒モード。
もういやだからね!! という感じ。
看護師さんが一生懸命なだめてました・・・。
そういえば、ここの眼科では特に必要なければ5才未満は視力検査しないんだった。
検診でパスしなかったとか、親が気にしていて希望する場合なんかは測るけどね、
と先輩視能訓練士が言ってたっけ。
ということは、怒ってきた先輩は
ちっちゃい子の視力検査はしたことないし、
知識もない、
ということか!?
「わたしたちは資格ないからね~」
と都合よく逃げるのはやめてほしい。
先輩視能訓練士が統一して指導してほしい。
忙しくて時間がないのも分かるんだけど。
とはいえ、わたしは資格を持っていても未熟です。
別の方法もあったのでは、
次のために勉強しておこう、という感じです。
機械もちゃちゃっとできるようにセットしておいて、とりあえずチャレンジはしてみて。
ダメそうだったら泣き出す前にすぐ離れてもいい。
ただ、全国を眼科クリニックでは資格を持たない人が検査を担当していることが多いです。クリニックによりますが、視能訓練士はいても少数派です。
とはいえ、資格がないからといって排除されれば、眼科クリニックはつぶれてしまう問題です。
「資格のない人が検査してはいけない」
という意見は多々ありますが、
資格がなくても一生懸命勉強して努力してますから、
ご理解をお願いします。
ところで、
視力検査は赤ちゃんでもできます。
年齢や理解度に合わせて方法がいくつかあります。
全部の病院に検査機器が揃っているわけではないので、
持っている病院に紹介されるときもあります。
検診でできなかった、気になるけど分からないよね、
という場合でも病院に来てくださいね♪