ある野良猫の残酷な最期。
うちの愛犬は困ったことに猫を追いかける癖がある。
散歩中はリードをつけているので、愛犬は比較的安全。
でも、猫のほうは急いで走り去ってしまう。
1ヶ月前のこと。
散歩中に車の多い道路で猫が横たわっていた。
すでに亡くなっていた。
たぶん、交通事故だ。
車は猫の遺体のを避けながらも、びゅんびゅん走っている。
この猫は電車の高架下に住んでいた野良猫。
もしかしたら誰かがエサやりをしていたかもしれないが、首輪はない。
散歩中にごくたまに見かけたことがある。
これ以上、遺体が傷つく前に助けてあげたいと思った。
でも、箱やタオルを持っていなかったし、家からも離れている。
何もしないまま、泣きそうになりながら帰った。
そんなに気になるのなら、今すぐ箱とタオルを持って迎えに行けばいいじゃないか、
と、何度も思う。
それでも、怖いのだ。
遺体を触ることが。
今まで、うちのペットたち犬3匹とうさぎを看取ってきた。
思い出すのは亡くなったときの悲しみや喪失感だけではない。
硬く固まった体。
抱っこしても撫でてもふにゃ~と柔らかかったのに。
氷のように冷たい体。
くっつかれると、あんなに暖かくてぽかぽかしてたのに。
重たい体。
もっと軽かった気がするのに、ずっしり重みを感じる。
ふわふわの毛並みは変わらないのにね。
うちの子なら最後にぎゅっと抱きしめられるのに、
よその子になると怖くなってしまう。
結局、勇気がないんだね、と思った。
見なかったことにしたいんだね、わたしは。
同じ場所を通れたのは数日後だった。
相変わらず、車はびゅんびゅん走っている。
猫の遺体はなかった。
あれから1ヶ月。
だいたい毎日、同じ道を愛犬と歩く。
当たり前だけど、もうあの猫に会うことはない。
ところが、別の猫が現れた。
愛犬が猫を見つけると、道路を渡っていった。
同じ、あの高架下で。
あの猫が横たわっていた場所を。
どきどきした。
目の前で交通事故にあったらどうしよう。
この先、あの猫と同じように悲しい最期になるのではないかと。
あの猫がいなくなって、住処を移動してきたのかもしれない。
初めて見た猫だが、やっぱり首輪はない。
誰かにはご飯をもらっているのだろうか?
野良猫は幸せに生きることができない。
うちに猫が来るまでは(というか、自分で保護して育てるまでは)
そんなに真剣に考えていなかっただろうな。
外では猫を追いかけてしまう愛犬だが、
うちの猫を追いかけることはしない。
毎日、一緒にじゃれて遊ぶ。
どうやら、外で見かける猫と同じ生き物だということが分からないらしい。
不思議な関係だ。
その2匹の遊ぶ姿はとてもほほえましい。
あの猫も、本当はペットとして幸せに生きていってほしい。